訃報

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 焼香を済ませ、姉の隣に並ぶ。じっと思いつめたような顔で祖母の顔を見下ろしていた姉は、身じろぎもせずに言った。 「見てごらん。ばあちゃん、穏やかな顔してるでしょ。やっと楽になったんだね。ずっとこんな優しい顔見なかったもん」  振り向きもせず、隣に座ったのが僕だとわかったらしい。  真っ白く死化粧をされた祖母は、僕の記憶にある祖母とはまるっきりの別人だった。顔の骨が浮き出るほどにやせ細り、頭髪は一本残さず真っ白になっていた。姉の言葉に反して、真一文字に結ばれた唇からは、どんな表情を伺う事もできなかった。  僕は祖母の遺体に対して何の感想を抱く事もできず、そんな自分をごまかすように姉に問い返した。 「そんなに大変だったの?」 「うん。最後の方は特に。誰が誰だかわかんなくなっちゃってたし。でも、苦しかったんだと思うよ。ばあちゃんが一番辛かったと思う。……ばあちゃん、徹が来たよ。徹だよ。ほら、ばあちゃんの顔、撫でてあげて」  姉に促されて、僕はそっと手を伸ばし、祖母の額を撫でた。  初めて触る祖母の額は、固まったコーキングゴムみたいに無機質な感触しかしなかった。
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