痴ほう症

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痴ほう症

 父方の祖母の家は自宅から1㎞と離れていなかったから、小さい頃はよく遊びに行っていた。  父には姉、つまり僕の叔母が一人いたけれど、別の家に嫁いでいて。長男である父も実家には収まらずに、近くに自分の家を建てた。これが僕の家だ。だから父と叔母が家を出て以降は、祖父母はたった二人だけで暮らし、家とともに古びて行った。  せめて叔父や叔母が一緒に住んでいて、従兄弟でもいればまた違っていたのだろうけれど、行っても年老いた祖父母しかいないばあちゃん家というのは、僕にとっては退屈なものでしかなかった。祖父とまわり将棋をしたり、近所の商店でお菓子を買ってもらって喜んだのもせいぜい小学校低学年ぐらいまでで、思春期に入る頃にはただお小遣い目当てに足を運ぶようになっていた。  僕が中学校に入る前、祖父が亡くなった事で余計に足が向きづらくなった。一人住まいになってしまった祖母を心配して、両親や叔母達は足しげく祖母宅に足を運ぶようになったものの、僅かな年金で暮らす祖母からはお小遣いを貰う事もなくなって、僕はますます祖母とは疎遠になって行った。
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