痴ほう症

2/3
前へ
/12ページ
次へ
 さらに輪をかけるように、僕が高校を卒業する頃、祖母は痴ほう症を発症した。ずっと一人きりで半分自宅にこもりきりのような生活を送っていたのが良くなかったらしい。発覚したのは、たまたま訪れた父が奥の部屋に溢れた通信販売のグッズと引き出しに詰め込まれた請求書の山を見つけたからだった。通販業者は祖母が半分ボケているのを利用して、次から次へと商品を売りつけた。祖母はどういうわけか、それらをとても良い物と思い込み、次々と買っては父や叔母に見つからないようにと使いもせずに奥の部屋へとしまい込んでいたのだ。  僕達が何も知らない顔をして学校に通っている間も、両親や叔母夫婦の間ではボケ始めた祖母について様々な話し合いが持たれた。どちらかの家に引き取って面倒を見るか、交代で泊まる等のアイディアが出たものの、祖母本人が嫌がるので事態は全く進展しなかった。  結局両親や叔母夫婦がこまめに様子を見に行くというなし崩し的な妥協案に落ち着いたようだ。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加