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闘病
通夜や告別式の来客もどちらかというと両親や叔母夫婦の知り合いや縁者がほとんどで、こじんまりと催された。祖母に直接関わりがあったのは、地域の保健委員さんや行政区長さん、訪問介護士さんぐらいでしかなかった。
参列者は祖母の死を悼むというよりは、両親や叔母夫婦の苦労をねぎらうばかりだった。
祖母は半年ほど前に体調を崩し、たまたまかかった病院で癌の疑いがあるという診断を受けた。すぐさま総合病院へ紹介状を書いてもらい、精密検査を受けたところ既に手のつけどころがないぐらい癌は進行していた。
息苦しさや痛み、倦怠感に嘔吐感とありとあらゆる癌の症状も出始めていたため医者からはホスピスへの入院を提案されたものの、祖母は頑として聞き入れなかった。両親や叔母夫婦がどんなに言って聞かせても、家に帰ると言い張った。
なんでも祖父は死の間際、家に帰りたい、家で死にたいと嘆きながらこの世を去って行ったらしく、それを目の当たりにしていた祖母は痛みや苦しみに耐えながらも、自宅での生活にこだわったのである。
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