訃報

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訃報

 テレビの情報番組が連日の猛暑や熱中症への警戒を呼び掛けていたかと思っていたら、気が変わったように曇り空が続き、木々の葉の暴力的な青さもいつのまにか影を潜め、あぁ、今年も夏は終わったんだと気づく、ちょうどそんな頃。  一本の訃報が届いた。  大学を卒業して社会人になってからというもの、実家に帰省するのなんて盆と正月のどっちかに帰ればいいかぐらいの頻度でしかなかった。  帰ったとしてもいい加減地元の同級生たちも家庭を持ち始めて飲み会の誘いも少なくなっていたし、そもそもの関係性自体が疎遠になりつつあった。実家でゴロゴロ過ごすのもせいぜい一日二日で飽きが来て、二晩も泊まれば適当な理由をつけて東京に帰る、そんな繰り返し。  実家に対してすらそんな状態だったから、父方の祖母宅……俗にいう”ばあちゃん家”に対しては、ますます足が向かなかった。最後に行ったのは大学の卒業を報告した時だったか。
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