第5話:藤井ナオト(男 42歳)その2

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第5話:藤井ナオト(男 42歳)その2

(2020年10月1日 14:30PM 、埼玉県 大宮駅付近のカフェ) 藤井ナオトは人気がない窓際のテーブル席に座り、慌てている。 ナオト「(まさか、俺の開発した【個人検索アプリ】が 勝手にインストールされるなんて!そんなバカな!)」 当初の計画では、夜の帰宅するタイミングを狙って 陽子のマンション前まで行き、 【個人検索アプリ】で陽子のスマホに気がつかれずアクセスし、 そのまま大宮を離れるという計画だった。 ナオト「(それが、【個人検索アプリ】が勝手に起動し、 アプリ自ら第三者のスマホにアクセスし、 自動インストールを実行してしまうとは!)」 冷静になろうとアイスコーヒーを口にし、 ナオトはカバンからタブレットを取り出す。 ナオト「(少しでも早く、インストールされたスマホを見つけ出さなくては)」 【個人検索アプリ】にはGPS機能がついており、いつ、どこで、 どのスマホにインストールされ、 使用されたかを確認することができる。 ナオト「(いったい、どこでインストールされたのか? プログラムに誤りがあったのか?それともバグか?)」 表示されたGPSデーターをみて、ナオトは絶句する。 ナオト「(山手線車内?!テストをした時にインストールされたのか!?)」 タブレットに表示されたデーターには、インストールされた時間、 場所、スマホの機種名が表示されている。 【個人検索アプリ】5台にインストール済み ナオト「(5台も!しかし、なぜ5台のスマホに? あの時、検知したのは確か4台だったはずだ・・)」 ナオトはタブレットの画面を凝視し続ける。 ナオト「(【2トーク】にアクセスをした時か!)」 山手線内で【個人検索アプリ】のテストをした時、 ナオトは【2トーク】にアクセスできるかチェックをした。 ナオト「(いや、アクセスできたのは4台だけのはず!?なぜ1台多いのか?!)」 すぐにインストールされたスマホの詳細を調べ始める。 【アクセス】5台 【機種名】 H-High G66 SOFT (ユーザー名)少しリッチなパパ S-SR A44 SMoba (ユーザー名)HIRO S-XR X45 WXMoba (ユーザー名)アリス命 APhone XS BU (ユーザー名)MAKOTO APhone RX (ユーザー名)Unknown ナオト「(すでにアプリを使用したスマホは・・)」 【2トーク履歴】 少しリッチなパパ、HIRO、アリス命、MAKOTO、Unknown ナオト「(こいつは誰だ?APhone RXを使っているヤツで、Unknown?)」 ナオトは焦り始めている。 ナオト「(間違いなく、電車でテストしたときに検知できたのは4人だった。なのにもう1人追加されているなんて・・)」 ナオトの頭の中は目まぐるしく動いている。 今はなぜアプリが自動インストールされたのかを調べるのではなく、 まず、アプリが世間に広がるのを阻止しなてくはならない。 ナオト「(どうすればいいのか?)」 一度でもインストールされたアプリをアンインストールさせる方法は 1つしかない。 それは、所有者自らスマホを操作しアプリを消去してもらう方法である。 ナオト「(【2トーク】かメールでスマホ所有者に連絡をとり、 アプリを間違って配信したので今すぐ消去してください、 なんて言えるわけがない)」 これでは違法なアプリを作った本人自ら名乗り出るようなものだ。 もはや、アプリをアンインストールすることは現時点では不可能である。 ナオト「(もし、このアプリが悪用されたとしたら・・)」 【個人検索アプリ】は、他人の会話をのぞき見することはできても、 書き込みをすることはできない仕様になっている。 しかし、他人のスマホにアクセスできるということは、 スマホに入れてある個人情報は全て見ることができてしまう。 ナオト「(スマホに入っている住所、電話番号、クレジットカードの番号、 銀行口座・・全ての情報を手に入れることができてしまうだろう・・)」 このアプリを使えば、他人のスマホの情報など簡単に手に入れることができる。 ナオト「(アプリの消去は不可能だ。 だが、なんとしても悪用される前にアプリを使用不能にしなくては!)」 ナオトは務めて冷静になろうとしている。 ナオト「(アプリを使用不能にするには・・ スマホ保有者に10m以内に接近し、遠隔操作でアプリを破壊するしかない)」 ナオトはタブレットをカバンにしまい、 会計を済ませるとすぐに大宮駅に向かう。 ナオト「(自分で蒔いた種とはいえ、面倒なことをしてしまったものだ)」 ナオトは心底、自分のした行為に呆れ果てていた。 だが、一刻も早くアプリ所有者のもとにいかなくてはならない。 (2020年10月1日 15:10PM、 埼京線車内) 【個人検索アプリ】にはスマホ所有者の現在地が示されている。 ナオト「(GPSによると・・一番近くにいるのは、 豊島区池袋、次に千代田区秋葉原駅近辺か)」 【個人検索アプリ GPS】 豊島区エリア: HIRO、MAKOTO 渋谷区エリア:少しリッチなパパ 千代田区エリア: アリス命、Unknown ナオト「(せっかく大宮まで行ったのに・・まず豊島区の2人、HIRO、MAKOTOから始めよう・・)」 ナオトは深いため息をつく。 (2020年10月1日 15:35PM、 池袋駅) 電車は池袋駅に着き、ナオトはタブレットを片手に急いで電車を降りる。 ナオトのスマホの着信音が鳴り、ショートメール(SMS)が届く。 【SMS】メッセージが届きました! ナオト「SMSからメッセージ?なんだろう?」 【SMS】「オマエヲ シッテイルゾ」 ナオト「!」 ナオトは思わず後ろを振り返る。 だが誰もいない。 ナオト「だ、いったい誰だ!?」 【SMS】「アプリヲ バラマイテヤル」 ナオト「!」
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