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優しい君と、僕等の世界
「じいちゃんなんか、だいっきらいだ!」
僕はわんわん泣きながら叫んだ。言われたじいちゃんも、隣で涙目になっていた僕の弟のふうくんもポカンとしている。
ふうくんはともかく、じいちゃんは本気で、僕がなんで怒って泣いているのかわからないんだろうか。なんだかお腹のあたりがムカムカしてどうにもならなかったので、僕はふうくんの手を引っ張って言ったのだ。
「行こう、ふうくん!じいちゃんになんか、話しても意味ないよ!僕が馬鹿だった!」
「ちょ、兄ちゃん……!?」
「こ、コラ雷都!じいちゃんになんか、とはどういう意味だ!?」
「そのまんまの意味!」
確かに、じいちゃんは厳しいところのある人だ。それでも、孫のことを可愛がってくれているのはわかっていたし、尊敬できるところもたくさんあったはずだった。
でも今ばかりは、じいちゃんに相談したことを激しく後悔している僕がいる。じいちゃんは戦争に行っている世代ではないけれど、じいちゃんのお父さんが戦争を経験している世代だとは聞いていた。戦争を経験している人達は、とにかく教育で厳しいことで有名だったと。
食べ物を食べられるだけでありがたいと思え!と嫌いなものも苦手なものも無理やり食べさせられたとか。
男が泣くなんて論外だ!根性叩き直してやる!理論とか。
正直今の時代からは全然考えられない、それこそ僕に言わせればそう“時代錯誤”な考え方を押し付けられた世代だったらしい。
だからだろう。じいちゃんも、少なからずそういう考え方に染まってしまっても仕方ないかもしれなかった。だけど。
「なんでふうくんが泣いたのか!なんで僕が怒ってるのか、じいちゃん全然わかってないでしょ!」
怒りながら、僕の眼からはぽろぽろと涙が溢れて止まらない。
本当に情けないなと思う。僕は頭に血が上っても涙が出てしまう。悔しいのも悲しいのも、全部眼から零れ落ちて言ってしまうのだ。
でも、僕のことなんか今はどうでもいい。
大事なのは、僕の可愛い可愛いふうくんの名誉だ。
「だから嫌い!じいちゃんなんか、だいっきらいなんだから!」
僕は戸惑うふうくんの腕を引っ張って、じいちゃんの家を飛び出した。
その時スマホと財布だけきっちり持っていった僕は、結構偉いなと自分でも思う。
夏休みの田舎は、途方もなく暑くて、とてもじゃないけれど飲み物なしにいつまでも外にいられるような場所ではなかったのだから。
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