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脳裏を過ぎるのは、まともにあのガスを吸い込んだであろう少年。
あれは、酸素をなくすものだ。
下手すると、酸欠では済まない――
「くっ――」
わたしは駆け出した。
あの子はわたしを殺そうとした。
そんなひとのことを気に掛けて、いったいどうすると言うのか。
戻ったところで、あんなガスの充満した部屋――わたしだって、無事じゃ済まないかもしれない。
共倒れになる可能性だってある。
あんな地下の、窓もないところ……。
だから――
「ごめん……」
わたしは、ばかだと思う。
だって、こうして食堂に向かっていることを、後ろめたく思っているから。
この選択は、間違っていない。
そう、思うのに……。
「ごめんなさい……」
届くはずのない謝罪を述べながら、わたしは一階の廊下を走っていた。
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