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【 第一話: 恋愛サブスクリプション、はじめました♪ 】
『トゥルルルルル……』
「もしもし、『若菜』です」
「あっ、若菜。俺、『龍之介』兄ちゃんだけど、久しぶり」
「あっ、お兄ちゃん。ひ、久しぶりだね……」
「あのさ、若菜にちょっと頼み事があるんだけど、ちょっと時間いいかな?」
「えっ? 頼み事?」
「ああ、実はさ、……」
東京へ行ったお兄ちゃんと直接電話で話すのは、4ヶ月ぶりだった。
私は、電話に出る前から、お兄ちゃんからの電話に、胸がドキドキしていた。
お兄ちゃんは、とても背が高くてイケメンで、スポーツも出来て、おまけに頭もすごくいい。
東京のとある大学の医学部に合格して、この4月から東京に一人引っ越していた。
「えっ? 若菜にお兄ちゃんの『彼女』の代わりになってほしいって! そ、それって、どういうこと?」
「ほんとゴメン! もう若菜しか頼む人がいなくて……。若菜、もう夏休みだよね?」
「えっ? う、うん、夏休みだけど……」
「電車賃ならお兄ちゃんが出すから、明日、東京へ来れない?」
「明日……?」
「ああ、急で悪いんだけど、明日来れないかな?」
「う、うん……。いいよ……。(やったぁーっ! お兄ちゃんと会えるーっ!)」
「ありがとう、若菜! 助かるよ。さすが、俺の妹!」
「あっ、お兄ちゃん。私からもお願いがあるんだけど、いい……?」
「ああ、いいよ! 何でも聞くよ!」
「夏休みの宿題があるんだけど、そっちへ行ったら教えてもらってもいい……?」
「ああ、いいよ! そんなことなら、何でも教えちゃうよ!」
「ああー、良かったぁーっ! じゃあ、明日、お兄ちゃんのところへ行くね!」
「ああ、若菜、ありがとう」
私は思いがけず、お兄ちゃんのところへ行くことになった。
しかも、何故かお兄ちゃんの『彼女』として。
お兄ちゃんは、背が高くてかっこ良かったから、中学・高校とすごく女の子にもてていた。
でも、スポーツと勉学に励んでいたので、多分、彼女は作らなかったと思う。
だから余計に、そんなお兄ちゃんに私は惹かれてしまったんだ。
東京へ行っても、やっぱりモテモテみたいで、その女の子たちからの誘いを断るために、私が呼び出されたって訳。
それでも、お兄ちゃんのそんなお願いが、私にはとっても嬉しかった。
その日の夜は、ふとんに入ってからも、明日のお兄ちゃんとのことで、胸がドキドキしてなかなか眠れなかった。
窓の外からは、やさしい虫の音が、明日のお兄ちゃんと私の久しぶりの再会を歓迎するかのように、温かく歌う音楽のようにいつまでも聞こえていた。
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