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【 第二話: お兄ちゃんに会いたい 】
――次の日、私は朝早く起きて、お兄ちゃんのところへ向かうため、荷物の準備をしていた。
すると、お母さんがこんなことを言ってきた。
「えーーっ! 1ヶ月も東京へ行くの!?」
「うん、だって、お兄ちゃんが来てって言ったんだもん」
「若菜、夏休みの宿題とか、学校の出校日とかもあるでしょ!?」
「それは大丈夫。お兄ちゃんが宿題見てくれるって言ったから。あと、学校も出校日はこっちへ帰ってきてちゃんと行くから心配しないで、お母さん」
「でも、どこに泊まるの!?」
「お兄ちゃんのアパートだよ」
「一緒にアパートに泊まるの?」
「そうだよ」
「そうだよって、アパート狭いでしょ? ふとんとか用意してあるの?」
「そんなの大丈夫だよ。もしおふとんなかったら、お兄ちゃんと一緒に寝てもいいし」
「い、一緒に寝るって……、若菜も、もう中学生なんだから、昔みたいに一緒に寝るのは……」
「どうして? 私たち兄妹だよ」
「兄妹って言っても、あなたたちは……」
「もう行くって、お兄ちゃんにも言ったから、もう行くね。新幹線の時間に間に合わないから。じゃあ、行ってきま~す!」
「あっ、わ、若菜……。もう、あの子ったら……」
私はお母さんの反対を押し切って、お兄ちゃんの住む東京へ向かった。
私は、お兄ちゃんと会えるこのチャンスを逃したくなかった。
このチャンスを逃したら、またいつ会えるか分からなかったから。
もう、夜、一人で泣きたくないの。
だから、どうしても、お兄ちゃんに会いたかったんだ。
『ピンポーン』
「は~い、どちら様ですか~?」
『ガチャ』
「きゃっ! お兄ちゃん、パ、パン……ツ……」
「あっ! わ、若菜!? ご、ごめん! 暑くてズボン脱いでた……。早かったな……」
「う、うん……。お兄ちゃんに早く会いたくて、早く来ちゃった……」
「そ、そうか……」
お兄ちゃんは、慌てていた。
約束の時間は夕方だったので、ちょっと早過ぎちゃったみたい。
お兄ちゃんは、慌ててズボンを履き、部屋をササッと片付けていた。
あの綺麗好きで、何でも完璧なお兄ちゃんのイメージとはちょっと違っていたけど、でもそんな慌てているお兄ちゃんもとってもかわいい。
「あれっ? 若菜、そのキャリーケースは?」
「あっ、これ着替えとか、洗面用具とか入ってる」
「そうか」
お兄ちゃんには、まだ言っていない。
私が1ヶ月、ここに泊まるっていうことを……。
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