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【 第七章: お兄ちゃん、帰るね 】
私は、お兄ちゃんの帰りを待ったけど、結局、次の日も帰っては来なかった。
多分、新しい彼女がお兄ちゃんにも出来たんだと思う。
夏休みも最終日になり、私は実家へ帰るため、身支度をした。
お兄ちゃんに、置き手紙を残して……。
私は、お兄ちゃんと過ごしたこのアパートでの1ヶ月間の思い出が、次から次へと頭の中でアルバムのように、駆け巡っていた。
いっぱい楽しいことがあった……。
でも、今は側にお兄ちゃんは、もういない……。
私は、涙を服で拭うと、キャリーケースを引いて駅に向かった。
駅までのこの道も、よくお兄ちゃんと仲良く手を繋いで、何度も歩いたことを思い出した。
でも、今私の手には、お兄ちゃんの手ではなく、キャリーケースを持って、一人寂しく歩いている。
その時、夏の終わりを告げるかのように、一瞬冷たい横風がビューッと、私の髪を通り抜けていった。
私は、ふと、後ろを振り返った……。
お兄ちゃんが追いかけてくると思ったから……。
でも、お兄ちゃんの姿は、どこにもなかった……。
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