戸張の決意と証拠

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驚いて戸張の顔を見ようとした瞬間、最奥に押し込まれて仰け反った。 「あぁっ!」 戸張の背中にしがみつくと 「俺に抱かれた男を奪うのが趣味みたいな女だからな。この後、浴室に行け。必ずババアが現れる」 そう囁き、腰を激しく動かし始めた。 「あっ……あっ……あっ……」 「光輝……、愛してる」 唇を重ね、俺も戸張の気持ちに応えるように舌を絡める。 「戸張……ご……」 『ごめん』と言おうとした言葉を、唇で塞がれた。 「謝るな。俺は、初恋の相手を抱けて幸せだったよ」 俺にしか聞こえない、小さな囁きに涙が溢れた。 「今だけ……今だけは、俺自身でお前に抱かれるよ」 俺も、戸張にしか聞こえない声で返すと、戸張は驚いた顔で俺の顔を見下ろした。 「光輝……?」 「昭英、ありがとう」 そっと両頬を包み、俺は戸張にキスをした。 すると、俺の中の戸張が大きくなり 「光輝っ、愛してる。お前を離したくない」 そう叫び、激しく身体を揺すぶられた。 目眩がする程の激情をぶつけられ、俺は戸張の背中を優しく撫でた。 「あっ……あっ……」 「光輝、光輝……」 唇を重ね、舌を絡め合い、吐息さえも奪い合うように身体を重ねた。 「光輝……もう……」 戸張の動きが激しくなり、俺は頷きながら 「俺も……もうっ……」 そう声を上げた。 「アァっ!……もう、イクっ!」 「光輝、出る出るっ!……うぁっ!」 激しく揺すられた後、腹の中の戸張が膨張して一気に果てた。 「凄ぇ……、光輝。搾り取られそうだ……」 身体を震わせ、二回腰を打ち付けてゆっくりと引き抜いた。 「あっ……」 喪失感に声が出ると、荒い呼吸をしながら戸張が俺の身体を強く抱き締めてキスをして来た。 俺が戸張の頭を抱き寄せ、戸張のキスに応えていると 「光輝、手放せなくなる」 拗ねた顔をして呟き、軽く唇を重ねるだけのキスを落とした。 「光輝、俺はこのまま家を出る。お前とも、これが最後だ」 「戸張……」 やっと戸張の本音が分かり、良い関係になれるかもしれないと思っていたから残念だった。 俺のそんな気持ちが分かったのか 「こら、そんな顔をするな! 別れ難くなるだろうが!」 コツンと頭を軽く小突かれてしまう。 そしてもう一度、強く抱き締めると 「何処に居ても、お前の幸せを祈っているからな」 そう言われて、俺も戸張を強く抱き締め返した。 どちらともなく唇を重ね、『さよなら』のキスをした。 「光輝、愛してる。お前の全てを」 そう言うと、戸張はゆっくりと俺から離れた。 俺はベッドに横になったまま、戸張が身支度を整えるのをぼんやり眺めていた。 「じゃあな、光輝」 頬にキスを落とされ、俺は飛び起きて戸張の背中に抱きついた。 「又、会えるよな?」 俺の言葉に、戸張が一瞬身体を強ばらせた。 少しの沈黙の後、戸張は俺の頭をくしゃくしゃっと撫でると 「俺の気持ちが……思い出になったらな」 そう言って小さく笑った。 「今度こそ、じゃあな」 戸張は抱き締めている俺の手を剥がし、ゆっくりと部屋を出て行った。 俺がしばらくその場で動けずにいると、部屋のドアがゆっくりと開いた。
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