戸張の決意と証拠

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「でも、バレたらお前もタダじゃ済まないんじゃないか?」 そう呟いたその時だった。 「ちょっと、何しているの?」 戸張夫人が、何やら液体と注射器を持って現れたのだ。 「ママ! 光輝様に手を出すのはマズイって!」 慌てて叫ぶ偽アキラに 「黙りなさい! この、裏切り者!」 そう言って、偽アキラに平手打ちをした。 「こいつの後に、お前にもこの薬を打ってやるから安心しなさい」 戸張夫人はそう言うと、注射器に注射針を刺して液体を注射器に入れ始めた。 「ママ! 光輝様に何かあったら、皆殺しにされちゃうんだよ!」 必死に止めようとする偽アキラと、抵抗する戸張夫人。 動けない俺は、ただその光景を眺めるしか出来ない。 もう、これで終わりかもしれない。 そう思った時だった。 何やら物凄い物音がしたかと思うと 「光輝!」 血相を変えた赤司が走り込んで来たのだ。 そして俺の姿を見るなり、怒りに震え出した。 「赤司様! 違うんです。この男が、私達を誘惑して来たのです!」 必死に言い訳をして、慌てて注射器を隠そうしたその手を、物音も立てずに現れた幸雅が捻り上げた。 「何するのよ!」 戸張夫人が叫んだ瞬間 「貴様、それを光輝に打つつもりだったのか?」 初めて見た、赤司の激昂した姿だった。 「違います! 誤解です、赤司様!」 急にしおらしい女を演じているが、手に持ってる物的証拠があるからなぁ……。 そう思っていると 「光輝、大丈夫か? この頬は、誰にやられた?」 俺を心配する赤司に思わず驚いて、いつもの演技を忘れてしまう。 しかし、それが逆に幸をなした。 「可哀想に……心神喪失しているじゃないか。光輝、私が分かるか?」 そっと抱き寄せられ、人生で初めて赤司が頼もしく見えた。 「まさか……身体が動かないのか?」 そっと叩かれて赤くなった頬に触れながら、優しく赤司が聞いて来た。 俺はここぞとばかりに 「赤司……様?」 今、意識がハッキリしたかのように演技をした。 「光輝、私が分かるか?」 「赤司様、すみません……。俺、俺……赤司様以外に、抱かれてしまいました。もう、貴方に愛される資格なんか無い」 そう言って、涙を流してた。 そんな俺を見て、戸張夫人が目を見開いた。 「何言って……! お前、昭英と散々……」 そう言いかけた戸張夫人の腕を、どうやら幸雅が強く捻りあげたらしい。 「痛い痛い! 赤司様、あんまりです! 私達は、仲間じゃないですか!」 必死に訴える戸張夫人に 「仲間だと?」 まるで地を這うような低い声で呟くと、恐ろしい形相で戸張夫人を睨み付けた。

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