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「あ、ええっと……吹川琴香っていうわ……」
てっきり瓦礫の下で短い生涯を終えると思っていた私は状況が飲み込めない。
お目目とお口をまあるくしていると
「琴香様、まだきっとお疲れが残っていらっしゃるでしょう。甘いものはいかがですか?」
と謎の物体をちぎる男。
ちょっと待って、今の状況まだ理解できてないよぉ!
差し出されたのは干しレーズンの入ったシフォンケーキだった。
ラム酒の香りがする。
「あ、ありがとう……」
皿は受け取ったけど。
初めての部屋で、初めて会ったおじさんにもらった食べ物……
もしかしたら毒とか麻薬とか媚薬とか入ってるかも……
「すいません、これ食べたら……例えば死ぬとか呪われるとか、みたいな事起こらない……よね?」
え、めっちゃ失礼じゃん。
訊いてから気づいたから、どうしようもないなウンウン。
自分のしたことを後悔はしない主義です!
カッコ悪いし、他人からの印象が悪くなっても死ぬわけじゃないもんね。
ポジティブ最高!!
ハイスイマセン。
でも男は笑ってくれた。
「ははは、私は琴香様の下僕です。お仕えさせて頂いている方に毒を盛るなんて事太陽が東から昇ってもあり得ませんよ」
……下僕だと!?
そんなワード実生活で初めて聞いたよ!?
さっきは私の事を未来の王紀って言ってたし……
てか太陽が東から昇るって普通じゃない?
毒を盛るのが当たり前ってこと?
フツーは西からだったっけぇ?
あああもうワケワカメ!!!
お目目とお口とお鼻の穴をまあるくして思考する事を放置していると、男が今私が置かれている状況を教えてくれた。
私の記憶、つまりここに来る前の私の状況、とこの時彼が語ってくれた事をまとめるとこうだ。
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