プロローグ

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プロローグ

「な、なんだぁぁぁぁぁ!!」  秋の夕暮れ時、北海道の当別駅から大学前駅に向かって、のどかな単線区間を走っていた列車の運転士が、こちらに向かって走って来る旧型の気動車を見つけ、直ちに非常ブレーキを扱った。  指令室でも突然現れた対向列車の表示を見て、急いで列車を止める指示を出す。 「こちら指令、札沼線2595Mは直ちに停車せよ!」  銀色の車体に黄緑色のラインをまとった6両の電車が、突然ギイギイと音をたてて急停止した。車内はざわざわと騒ぎになっている中、運転士が指令と連絡を取る。 「こちら札沼線2595M運転士! 無事に停車した!」  指令室でもディスプレイを確認する。直ちに停車の措置を取ったのが幸いしたようだ。 「こちら指令。停車を確認……、あれ!?」  ディスプレイにさっきまで見えていたはずの対向列車は姿を消していた。運転士からも同様であった。 「……、こちら2595M運転士。いたはずの対向列車が居ません!」  その時、停車した列車の前方に剣のようなものを携えた少女が見えた。運転士が確認のため降車したが、その時既に人影は無かった。  10分ほど周りを確認したが異常は無く、運転士は列車に戻って指令室と通信する。 「こちら2595M運転士、線路に異常は無いようですので発車の許可をお願いします」 「こちら指令。了解しました。2595M、出発してください」  運転士は呆然としながらも、マスコンを手前に倒し、列車を動かす。15分程の遅れで済み、幸いにもけが人は居なかった。  2020年秋、札幌駅から北に伸びる通勤路線、TR札沼線で最近、このような怪奇現象が3〜4日に一度の割合で起こっていた。  なおこの路線は、1987年に学園都市線と言う愛称が付けられており、現在ではそちらで呼ぶのが一般的になっている。
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