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それからというもの、山田は心を入れ替え、このラーメン屋で真剣に働くようになった。
「バカヤロウ! なんだこの下手な湯切りは!」
ゴリラ風頑固オヤジの指導は厳しく、山田は何度も湯切りしたばかりの麺を頭から被らされた。蕗はその時、決まってクスクス笑いながら辛い粉をすり鉢ですっていた。
そんな山田と蕗の間に恋愛感情が芽生え出したのは、当然の成り行きだったといえよう。
「み、み、蕗さん……あ、あ、あのっ……実は俺、君のことが、すっ、すっ……」
期待のこもった蕗の瞳は眩しく、肝心なところでいつも山田を怯ませる。
「す……す……」
「す?」
「すっ! ……ぱいラーメンも今度作ってみましょうかね」
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