可愛くない人質の泣かせ方

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 不幸というものは重なるものだ。  さらなる不幸は、オヤジが残した借金だった。あんな顔してヤクザが経営するメイドカフェに週5で通っていたなんて、山田にとっては寝耳に水だった。 「さあ、金を返してもらおうか! それともこの店を潰してやろうか?」 「やめてください! このお店だけは……父の残した財産だから! それに……辛酸っぱいラーメンで日本一になるっていう山田さんの夢の舞台だから……!」  蕗は全身全霊をかけて、店と山田の夢(山田は初めて聞いた)を守ろうとしてくれた。  そしてとうとう彼女は、その身を売り飛ばされることになってしまったのだ。 「明日の正午までに金を用意しなければ、この女は地下アイドルとしてガンガン売り出すからな! キモオタと一枚千円でチェキ撮らせるからな!」 「くそっ……良心的な適正価格を提示してきやがって……!」  不甲斐ない山田に、蕗は最後まで心配かけまいと天使の微笑みを浮かべて言ってくれた。 「大丈夫よ、山田さん。なんか私、売れそうな気がする」  いいねのハンドサインで、蕗はヤクザと共にラーメン屋を去った。 「……蕗ーーーーーーーー!!!」
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