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57.
一度も俺に会いに来なかった・・
会いに来てはくれなかった父さん。
1度だってそんなヤツのこと、父さんだなんて
思ったことない。
母さんはあの男のことを悪く言ったことはないけれど
俺はじいちゃんから聞いていろいろ知ってるんだ。
おじいちゃん、あの男のやり口は外道にも劣るってすんごい
怒ってたからなぁ~。
難しくてほんとはわかんないけどじいちゃんが
怒ってるからよくないことだよな、きっと。
「恩に着せたくはないけど・・
さんざん金銭でも気持ちでも、あいつに尽くしてきた娘に
あんな仕打ちができるあの男は人間じゃないさ。
人の皮を被った獣だよ。
四の五の言わず潔く身を引いた亜矢子のことをあの男は
気にも留めておらんだろうが、私は毅然としてて我が娘ながら
りっぱな人間だと思ってるよ。
お前の実の父親のことを酷く言うのは憚られるけど、真樹夫
本当のことを知っておいてほしいんだよ」
そう言って悔し気にじいちゃんは俺に話してくれた。
「あの男に亜矢子はもったいないさ。
別れて正解だったンだ。
お前は母さんを大切にしてやれ。
母さんはか弱い女なんだからね。
ポキっと折れそうになった時には真樹夫頼むぞ。
男は女を守れてナンボだぞ、忘れるな。
ばあさんも亜矢子もそしてこれからお前の伴侶になる嫁さんも
守れる男になれ・・いいな」
「うん、じいちゃん分かった。
守れる男になれるようガムバル。
じいちゃんみたいな男になる」
「泣かせるんじゃない」
じいちゃんはそう言って俺の頭をちょんちょんと撫でてくれた。
愛情深いおじいちゃんに触ってもらって、俺は幸せな気持ちに
なった。
俺のじいちゃんがこの人でよかったと思った。
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