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※ side of Yomeiri ※ 1
はじめてのキスは中学二年生の秋だ。
本人はキスではないと言い張るが、それ以来俺は何度か口唇を重ねては、自分とは違う柔らかな感触を甘いソフトキャンディのように味わって、彼女に「お前は俺のもので、俺はお前が大切だから、お前も自分のことを大切にしろ」とことあるごとに言い聞かせていた。
あれから六年。彼女は初めて出逢ったとき以上に瑞々しく美しく成長し、いまでも俺は彼女と関わる都度、恋に堕ちる。唇以外の場所だって欲しいとずっと思っていた。
だけど彼女が大切すぎて、傷つけるのが怖くて、俺は未だに手が出せずにいる。
ずっと一緒にいるからと誓ってくれたその言葉に甘えていたのも事実だ。だから。
俺はこの状況に目を疑っている。
「大義名分は立ったぞ。さぁ、僕を奪いたまえ!」
入る予定などなかったラブホテルの一室で。
俺――嫁入駿河は、大切にしていた彼女、大塚野原に、なぜか襲われそうになっている……
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