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カードバトラー・ケンは街で一番のバトラーだ!
「俺のターン! ドロー!」
俺はケン! 街で一番強えカードバトラーだ! 夕暮れの公園でバトルする夏休みはいいよな!
今、俺がやってるカードゲーム『マジック・ザ・シャドウ・キング』通称マザシギは今、子供から大人までみんなに流行ってるサイコーのゲームなんだぜ!
「『身分証』を場に伏せてバトラーにダイレクトアタック!」
俺の拳が真っ赤に燃えたりはしないけど、公園で遊んでた子供の顔面をガッチリ掴んでこめかみを締め上げるぜ!
「ケンおじちゃん、痛いよ! ダイレクトアタックってそういう意味じゃないよ! っていうか身分証はゲームに関係ないだろ!」
悲鳴を上げたら試合終了だ! 今日も俺の圧勝だぜ! 握力78kgは伊達じゃあないんだぜ!
「剛力拳、28歳無職……やはり野放しにはできんな……」
誰かが俺の背後で聞こえるように言いやがる! うるせえ、誰だこの女子高生は!
「誰だお前は! ってなんだ、ノリコか!」
「いい加減ハロワ行かないと家を追い出されるぞ……」
眼帯の上に眼鏡をかけた、この珍妙な厨二病真っ盛りのぽっちゃり女子は飛鷹典子! 俺の幼馴染みだ!
「近所に住んでて挨拶もできないような大人が勝手に幼馴染み呼ばわりなど……笑わせる……」
クソッ、心を読んでやがる! マインドリーディングってやつか!
「全て声に出しながら心境を伝える大人だから世に溶け込むことを知らんのだ……」
自分だって浮いているクセに!
「ふむ……かような侮辱を受けたとあっては黙ってはおれんな……マザシギで勝負だ……」
眼帯がいつもとは逆につけられていることはノータッチだぜ!
【バトルスタンバイ】
マザシギはデッキにモンスターカード、トラップカード、マジックカード、そしてエナジーカードを組み込んで行うんだ!
最初に手札を5枚ずつ引き、ジャンケンか顔面パンチで先攻と後攻を決める! 俺はここ8年、誰にも先攻を譲ったことがないぜ! まずはストレートだ!
「事前に通報はしてある……」
今日は先攻を譲ってやるぜ!
「我のターン……デッキから1枚ドロー……モンスター『クレーマー♂』を召喚……エナジーカードを場に置いてターンエンドだ……」
ノリコのデッキは社会悪デッキ! 常に社会情勢に気を付けている匿名掲示板荒らしのノリコらしい構成だ!
「なら俺のターン、ドロー! マジックカード『ノリコの中学の卒業アルバム』! 片想いしていたサッカー部の中で唯一オタク趣味に理解のあった杉原宗一郎をプレイバックだ! マインドブレイク!」
「グッ……!?」
「思い出せ! そうちゃんのことを!」
「や、やめろ!」
まだノリコは立ってやがる! クソ、タフなバトラーだぜ! でもこれはまだプレリュード! フォルテシッシモでいくぜ!
「さらにトラップカードを場に伏せて、バトラーにダイレクトアタック!」
俺の右フックは男女平等主義者なんだぜ! 当然打ち抜く顎に性差もねえ!
「ギャフッ!」
馬乗りになってサレンダーを待つが、ノリコのやつ降参しねえ! 仕方ない! 手刀で眼鏡にダイレクトアタック!
「君、すぐそこ来てくれる? うちの交番なんだけど」
エナジーカード『レッドブル』は既に発動済みだ! すぐに逃げられるぜ!
「本当に逃げられると思ってた?」
手錠ごときで俺は国家権力には屈しないぜ! 俺は街一番のバトラーだ!
でも六法全書の威力には敵わねえぜ! ペナルティ留置所で一晩!
チックショー! まだまだこの国には強えやつがたくさんいるな!
でも俺は、絶対に世界で一番のバトラーになってやるんだ!
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