カードバトラーが休まる時! それはいつなのか!

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カードバトラーが休まる時! それはいつなのか!

ここまでのあらすじ。 地表に落ちた隕石が恐竜を絶滅させ、あれやこれがあって気付いたらカードバトルそっちのけで争いが起きる世の中が成立していた! 世界中の人類が資本主義に踊らされ、レシートで財布をパンッパンにすることが至福となった現代! それでいいのか、と多くの人類が立ち上がる! その中にはバトラーと呼ばれるアウトローがいた! これはそう言った人間たちが生活の価値を問う物語だ! ○剛力拳 「チックショー! 今日も朝日より前に目覚めてしまったぜ! 俺っていう人間はいつも時代の最先端を行ってるな!」  階段をタタンタタンと降りて最後の着地に全体重を乗せる踏み込み! これが健康の秘訣だぜ! 「母さん! 腹減ったから早く飯にしろよ!」 「分かったわ……トースト用意するから待っててね……」  母さんはいつも眠そうだな! 低血圧ってやつか! 俺の血圧を80ぐらい分けてやりたいぜ! 上が240、下が168だからな! 「ケン、今日は仕事を探しに行くんだな?」 「何言ってんだよ父さん! 俺はバトラーだぜ! 清掃やライン工なんてやってる暇はないんだ!」 「俺はな、ケン。心配なんだ。ただお前がこれから先──」 「どんな苦難をも打ち倒して見せるぜ! そのためにも今日の活動費をくれよ!」  父さんが目頭を押さえて3000円を卓上に置いた! 俺の言葉に感動したんだな! 泣くことなんてないのによ! 「財布から500円を召喚! 生贄にしてうまい棒を10本特殊召喚するぜ!」 「ケンちゃんはいつも元気だねえ」  近所で駄菓子屋をやってるババアは笑顔で俺をサポートしてくれるんだ! 今日も小上がりで鼻くそほじって鋭気を養うぜ! 「ケンちゃんはいつも元気だねえ」 「なんだよさっきからそればっかり! 電池が切れかけたファービーみてえだな!」 「ケンちゃんは本当にいつも元気だねえ」  どっちかっていうと躾のなってないAIBOみたいに思えてきたぜ! 「実は昨日、息子が亡くなってねえ。もっと甘やかしてやれば良かったと思ってるんだよ」 「そうかドンマイ! 人はいつか死ぬらしいからな! ババアも熱中症には気をつけて死ねよ!」 「あたしゃ130まで生きるつもりだからいいんだよ。ケンちゃんも熱中症には気をつけてね」  そう言ってホームランバーをくれたぜ! 「なんでバニラじゃねえんだ! チェンジ!」 「さあて今日も忙しいぜ! まずは公園の砂場に犬のフンが入ってないか確認する訓練からだな!」  俺は優しく正しいからな! ガキがトンネル掘ってる最中にフンを探り当てる前に全部排除しておくんだ!  そして、集めたフンを敵のゴールに向かってシュート! 超エキサイティング! 「ようし、待ってろ母校! てめえらの校庭に地獄を描いてやる!」  俺には休まる日なんて1日もないんだぜ! ○成金欠威 「確変だ! なあ、おっちゃん! 確変が来たよ!」 「おう、うるせえ。邪魔だ」  今日も1円パチンコで荒稼ぎを夢見る男が僕さ! いいや、夢じゃない! 雑誌の裏に載ってた3万円の確率予測機械と幸運を呼ぶ10万円のヘビ皮財布があれば夢じゃあないんだ! 「パッキーカードを墓地に捨てて銀玉ドリームを召喚だ! さらに5000円を生贄にパッキーカードを墓地から復活! まだまだ僕の快進撃は止まらないってわけさ!」 「なあ、俺の邪魔をすることがお前の人生にどんな影響を及ぼすんだ?」 『リーチ!』 「初号機暴走演出キター!!」  戦利品の板チョコが炎天下で溶ける前に、僕は避暑地の軽井沢に向かうんだ! 軽井沢っていうのは僕だけの秘密の場所で、具体的には河川敷のガード下さ!  頭上を走る列車の音に包まれながら、僕は日課の水切りをして精神統一をはかる! 平たい石がなければ作ればいいじゃないっていうのは有名なマリー・アントワネットの言葉だ! 僕は完璧な平たい石を作るべく両手を合わせてから、大きなコンクリートに掌をつけるぞ! 「クソッ! やはり真理の扉を開かずして錬成陣なしはできないか!」  そうだ! まずは賢者の石を探そう! 預金残高の桁が1つ減るけど、旅に出よう! 満員電車に揺られて隣街へ!  ドンキにも置いてないだなんてどういうことだよ! 玩具各種のコーナーに必ずあると思ってたのに!  ジャージ姿の金髪プリン女が香水の匂いをプンプンさせて歩いているばかりで有益なものはひとつもない! 仕方ない! こうなれば霊薬を手に入れて冒険に出るぞ! 「ジャックダニエルください!」  スマホの画面がブレて仕方ないな! でも霊薬を飲み続けないと死ぬだろうし、道路の白線から落ちたらマグマだ! 僕は冷静を保って歩み続けるぞ!  僕には休みなんてないんだ! こうして生きる毎日はこんなにも輝いているのだから! ○真池ルシア 「やあ、マイケルのダンス配信に来てくれてありがとう。閲覧者8名、今日も大入りだね」 『部屋キレイだね』 『初見です』 『ダンス期待』 「じゃあミュージックスタート」 『うわ、これガオガイガーのOPじゃん』 『ダンスになんのこれ』 『え、いつ踊るの』 「……」 『このポーズに意味あるのか』 『つまんね』 『もうサビ入ってるけど』 「……」 『つかもう俺しか観てないんだけど』 『俺もいるぞ』 「……」 『何がしたいの?』 「……ハァッ! 観てくれてありがとう。ステップが早すぎてカメラに映りきらなかったみたいだね。高速でキレのある動きは安物のカメラが捉えられないみたいなんだ。欲しいものリストは概要欄にあるから、ぜひ送ってくれよ」 『……』 「閲覧者0名、か。ふう。また時代を追い抜いてしまったか。審美眼も落ちたもんだ。さて、配信終了、と」  そうしてボクはクローゼットに衣装をしまうと、夕暮れの街に出た。今日も高校に通うために一般ピーポーの中へと身を紛れさせるのさ。  ボクには休みなんてないのさ。時代が追いつけるスピードで歩むなんて、三流のやることだからね。 ○回答  概ね3名とも毎日が休みみたいなもんだぞ! 後書き なお、ケンはこの後『散財王』というカードを手に入れるがレシートを受け取る文化がない彼は攻撃力と守備力の低さで近くにいた小学生に渡した。 その小学生が全世界マザシギ大会で優勝し、悪の秘密結社『ノクターン』と対立。ヒロインの女子中学生、中原由香里らと共に、彼は全力で戦う。 彼の名前は杉原宗二。兄は杉原宗一郎という。宗二は持ち前の明るさと根性で特訓し、独自のコンボでノクターンの幹部を追い詰める。 その時、ノクターンは全人類を滅ぼす悪魔のカードを生み出していた。宗二は奮闘するが、彼のライバル結城康太が悪魔のカードに取り込まれてしまう。 「宗二、俺はやっと気づいたんだ。人類は生まれながらにして他の生命を踏みつけにしていく運命にある。そうだろう、宗二」 「康太! お前はそんなことを本気で思っているわけじゃないだろう! 優しいお前に戻ってくれよ!」 「黙れ! 由香里ちゃんに選ばれたお前が、俺の気持ちを知りながらへらへら笑っていたお前が、そんなことを言う資格があると思っているのか!」 康太は悪魔のカードによって抑えていた気持ちが爆発したのだ。崩壊するノクターンの拠点から逃れる時、宗二は康太が笑うのを耳にする。 「俺が、康太を止めるんだ」 「宗二くん……」 ノクターンは崩壊したが、新たな脅威が人類の前に立ち塞がる。それはライバルで親友で夢を語り合った結城康太だ。 ⭐︎次号、新章「修行の旅路」編! 乞うご期待!
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