神さま、私にはなぜ、Giftをくれないの?

1/1
前へ
/10ページ
次へ

神さま、私にはなぜ、Giftをくれないの?

神が人にくれた最大の贈り物(Gift)は、忘れること、だと言う。初めのころ、嘆き悲しんでいた同級生たちも、凛空のご両親や年子の妹さんも、1ヶ月、3ヶ月、半年・・・と過ぎ、一周忌を過ぎるころには、元気を取り戻しているようだった。凛空がいない生活が当たり前になってきていた。 そんな中、私は、凛空のことをちっとも忘れられずにいた。手を繋いだ時のぬくもり、「弁当、ありがとな」って言ったときの笑顔、私の髪をくるくるって自分の指に絡ませて遊ぶ時の無邪気な微笑み。そして、いつもあの公園で、陽が暮れかけたときに、そっとくれた優しいキス。もっともっと、たくさん覚えていることがある。 母が言った。「絵梨(えり)、神さまが人にくれた最大の贈りものは忘れることなのよ。どうして、それに抗うの。凛空くんだって、絵梨の幸せを天国から祈ってるよ」 抗っている、つもりはない。私だって、出来ることならしれっと新しい彼氏とか作っちゃいたい。でも、出来ないんだ。凛空の匂い、凛空の優しさ、私がいたずらするときに、ちょっと怒った顔をする凛空。凛空の全てが私と共にある。どうして、神さまは私にだけ、そのGiftをくれないのだろう。凛空、凛空・・・会いたいよ。でも、なぜだろう、あの日・・・凛空が死んだ日、号泣して以来、何に対しても涙が流れなくなったんだ。凛空のことを想い出しても、切なくなるだけで、一滴の涙も出ない。神さまは記憶の代わりに涙を奪ってしまったらしい。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加