あの日が返ってきたようで・・・。

1/1
前へ
/10ページ
次へ

あの日が返ってきたようで・・・。

「ごめんね~、調子はどう?あら?ポカリ買ってきてもらったの?もしかして、雨宮くん?」 医務室の先生が戻ってくると、凛空はペコリ、と先生に挨拶した。が、彼女は全く気がついていない。そうか、凛空は私にしか見えないんだ。 「いえ、少し良くなったので、自分で買ってきました。もう少し休んだら、戻ります」 「そう?無理しすぎないでね」 しばらくして、凛空と手を繋いで歩く。久々の感覚だ。幽霊なのに、あったかい。 「凛空、今度の土曜日、ドリームランド、行かない?花火もあるよ」 「受験生が、いいのか?それに、ひとりで遊園地なんて、変だと思われるぞ」 「ひとりじゃないもん。凛空と一緒」 「絵梨・・・」 つらそうな顔をする凛空。それでも、心を切り替えたように、 「大勢の前のときは、心で僕に語りかけて。変な人だと思われないように」 「了解、で~す。じゃあ、講義に戻るね。待っててくれるよね?」 (絵梨・・・僕は、ずっと待っていたんだよ) 「もちろん!」 講義室に入ると、雨宮くんが心配そうに話しかけてきた。 「もう大丈夫なのか?」 「うん、平気。医務室まで運んで行ってくれたんだって?ありがとう」 「いや・・・今度、具合悪いときは早めに言えよ!」 ぶっきらぼうだけど、決して悪い人じゃないんだよね、雨宮くん。 その様子を、微妙な表情で凛空が見つめていたのに私は気がつかなかった。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加