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ドリームランドの花火のあとで
翌日。絵梨はお気に入りのワンピースで精いっぱいのおしゃれをして聞いた。
(凛空・・・どう?)
(可愛いよ、絵梨。さぁ、ドリームランドに行こう)
(うん)
手をつないで・・・ドリームランドまでは、電車で3駅。いつもだったら、凛空が2人分のチケットを買うんだけれど、今日は、絵梨が・・・
(えっ?2人分?)
凛空が戸惑った。自分は見えないのに・・・。
(だって、凛空の分、だよ)
絵梨が言い張った。入り口で、ちょっと不審げな目をされたけれど、絵梨が
「いいんです。2人分、切ってください」
と言った。ジェットコースター3種類に、メリーゴーラウンド、観覧車に・・・一緒にいろんなものに乗っていた。お昼は凛空が食べられないから、ファーストフードを食べ歩きした絵梨だった。そうしているうちに、7時になり、花火の場所取りが始まった。
「飲み物買ってくるね。凛空は・・・飲めないのよね?」
「ああ」
「絵梨、覚えてる?2年前のけんかの理由」
「・・・えっ?」
「僕が、記念日忘れてて、絵梨がすねちゃったんだよね。で、僕が、記念日なんか、たいしたことないって言って。ごめんな、2人の記念日は大切だよな」
そうだった。そして、絵梨がすねて逃げ帰っちゃったんだっけ。そのあと、記念日をお祝いする機会を失ってしまって・・・。
花火が打ちあがり始めた。わぁぁ・・・と言う歓声が上がる。
「これ、今年の記念日のプレゼント。僕ができる全て」
凛空が消えかけていた。少しずつ、透明になってゆく。
差し出された箱を開けると、2つのブレスレットが入っていた。刻印がされていて、
”From Kaito to Eri" "From Eri to Kaito”
と書いてあった。カイト・・・雨宮海斗くん?
「それを買ってきてくれ、って、神崎に頼まれてたんだ」
え・・・雨宮くん?なんでここに?凛空に頼まれたって・・・。
薄く、薄くなっていく凛空。抱きしめようとしたけれど、もう、霧のようにつかめない。悲しそうに微笑って、絵梨の唇にキスをした。何も感じない。そして、消えてしまった。
「・・・っ。凛空~」
私は、人目をはばからず声をあげて泣いた。凛空が亡くなって以来かもしれない、こんなに泣いたのは。凛空がここに来たかったのは、私の隣にいるのは雨宮くんにバトンタッチしたかったからなの?哀しいよ、凛空。私の心はこんなに凛空でいっぱいなのに。
そんな私を雨宮くんはそっと抱き寄せて、抱きしめてくれた。がっしりした身体。あの日、私が倒れた日も雨宮くんが運んでくれたんだっけ。遠慮がちにそっと私を見守ってくれた雨宮くん・・・でも、私は凛空をまだ忘れられない。
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