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第6幕
子ども:「それじゃあクララはずっとずっと 今もずっと眠ったまま?」
人形師:「クララにとって 現実は 悪夢とおんなじだったのさ。」
しわがれた声に 震える体 随分前に 視力は衰え
今はただ 一生懸命 笑顔を作っては 子どもを相手する。
子ども:「それはほんとにあったお話?それともおじいさんのお話?」
人形師:「さぁ どうだろね。どうだろうね。
どっちにしても あまり素敵な話じゃないね・・・。」
人形は寂しい木彫人形。
たった1つ売れ残り
クララの元にやってきた。
高い治療費を面倒がられ
家の中でも放っておかれ
可哀想なクララの夢を
少しでも叶えてあげたかった。
ただ それだけだったのに・・・
人形師:「・・・こ・・・これは一体・・・!!!」
クララが眠って4日目
あの夜私は見てしまった。
血しぶき飛び散るレースカーテン 父母頭から血を流し
見るも無残な塊は なぜか大きな鼠の剥製
頭からズッポリかぶっていた。
そして奥のベッドには 変わらぬレースパジャマのクララが
穏やかな寝息を立てていた。
カタカタ・・・カタカタ・・・カタカタ・・・
月明かりに照らされた床 冷たく光が反射して
大きな青い瞳の人形 ひとりでに進みでる。
まるで何かを食べたような 真っ赤な口を上下させ
人形:「ボクノ イトシイ プリンセス ボクノ イトシイ プリンセス」
人形師:「・・・全部 お前がやったのか・・・
全部・・・お前が殺したのか!?」
人形:「クララノユメハ ボクノユメ ボクノユメハ クララノユメ」
カタカタカタカタ・・・カタカタカタカタ・・・
人形師:「やめろっ・・・やめるんだ!!!」
人形:「ボクハ クララノ ユメノナカデシカ オウジサマデ イラレナイ
クララハ ボクノ ユメノナカデシカ プリンセスデ イラレナイ」
カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ
人形師:「あっ・・・・・・あぁっ・・・・・・」
人形:「クララノユメヲ サマスノハ クララヲ フコウニスルコトダカラ
クララノユメヲ サマスモノハ ワルイネズミ ワルイネズミ・・・」
カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ
人形:「ボクノ イトシイ プリンセス エイエンニ ボクノモノ」
人形師:「狂ってる・・・お前は狂っている!!!」
人形:「・・・クルッテ・・・ル・・・?」
カタ
言葉通りの静寂が 私と彼を包み込む。
人形:「イケナイノ?」
カタ
人形:「タイセツニシチャ イケナイノ・・・?」
カタ・・・カタ・・・
人形:「クララハ アイスルオトモダチ。トッテモダイジナ ヒトダカラ
クルシメタクナイト オモッタノニ・・・」
ポタ・・・ポタ・・・
青瞳から 何かが垂れる。
鮮血のようで そうでなさそうで
ビー玉のように こぼれ落ちる。
人形:「クララヲ アイシチャ イケナイノ・・・?」
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