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第7幕
今でも時々夢に見る。
人形の悲しい無表情。
私は問いに答えられぬまま
一目散に逃げてしまった。
恐怖以上の 黒い渦
心を掻きむしられるようで
情けなくて いたたまれなくて
彼女を見捨てた薄情さ その度襲う後悔の念。
私には無理だった。
クララを幸せにできるのは
綺麗事ばかりの大人より
紛れもなく 彼だったから
それから私は金輪際
彼の分身を作らぬと決めた。
二度と惨劇が起きぬよう。
二度と何かを失わぬよう。
二度と その問いを聞かぬよう。
国王:「クララ。またあの夢を見ていたのかい?」
后:「えぇ。でも今日は 少し違うの。
年寄りの鼠が泣いていた。私の傍で泣いていた。
貴方もなぜか泣いていた。人形の姿で泣いていた。」
国王:「・・・そうか。それは寂しいね。寂しい悲しい夢だったね。
僕はずっと貴女の傍で 貴女を守り続けるから・・・。」
あの日と変わらぬ 優しい腕で
あの日と変わらぬ 青い瞳で
クララは抱かれ 見つめられ
それは心地よく 美しく微笑む。
クララは可愛い女の子。
栗色柔らかセミロング
小鳥のさえずり甘い声
現実を知らない 女の子。
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