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12月14日(木) 健太
今日は葬式の日だ。朝から菜月はもう死んだんだ。会えることはないんだと言い聞かせていたのにまだあいつがふらっと現れそうな気がしてしまって仕方ない。そんな自分が嫌になる。昨日お通夜に来た菜月の親友の中村さんは号泣して崩れてしまうほどだったのに…。ほかの菜月の友達も泣いていた。みんな菜月が亡くなったことを現実として受け止めているのに…。
現実を受け止められぬまま葬儀は始まった。頭がはっきりしないまま僧侶による読経、お焼香が終わりついに最後の別れの時になった。皆が花を一本ずつ受け取り棺に入れていく。僕は菜月が大好きだったオレンジの花を手に取った。はじけるようなパワーを持つオレンジ。菜月の好きな色であり、最も菜月に似合う色だ。その花を菜月の顔の隣に置いた。とってもよく似合っている。似合い過ぎて笑顔になってしまいそうなほどだ。周りの人が泣いているのが不思議なくらい…。
参列者が花や手紙、菜月との思い出の品を棺に入れ終わると棺は閉じられた。そして出棺の時を迎える。僕も皆と一緒にバスに乗り込み火葬場へと向かった。火葬中は控室で待つらしい。僕が最後にお葬式に参列したのは幼稚園の頃だったそうだ。母方のおじいちゃんが亡くなった時だ。幼かったからかほとんど記憶にない。とりあえず席に着く。
「おい、健太!」
突然の声にびっくりして顔を上げる。目の前には達也がいた。
「おまえ、全然LINE返さねぇんだもん、心配したじゃん。石崎さんのことがショックでお前まで死んだかと思ったじゃん。」
「なわけねぇじゃん。」
「今日お前が来てたから一瞬安心したけど、お前茫然としててちょっと怖くなった。死ぬなよ。」
「だから、死なねぇよ。」
「ならよかった。俺はあっちにいってるからお前はゆっくりして。」
そういって達也は離れたテーブルにいってしまった。
そのままぼうっとしているうちに火葬が終わったようだ。案内され、ついていくと菜月のお骨があった。いつものあいつの跡形もなかった。茫然としているうちに母さんに促され、菜月のお骨を運び骨壺に収めた。運びながらふと
(菜月とはもう会えないんだ。)
と感じた。そう感じた瞬間、涙があふれてきた…。拭っても拭っても止まらない。前が見えない。それでもなんとか骨壺に入れた。すると突然腕をつかまれて連れていかれた。達也は俺とは性格は違うし、ぶっきらぼうだけど本当はやさしい。菜月の死の次の日、いつもなら朝話しかけてくるはずの達也が話かけてこなかったのは僕に直接掛ける言葉が見つからなかったからだろう。普段はぶっきらぼうに見える達也も根はすごく優しい友達思いなのだ。そんな達也に引っ張られ邪魔にならないところまで移動した。そこでボロボロ泣いた。
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