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12月17日(日) 菜月
お菓子の詰め合わせを買って帰ってそのまま寝てしまったのだろうか。眠い目をこすって目を開ける…体を起こすと…
「何ここ!?」
あたりは薄く靄がかかっている。明らかに自分の部屋ではない。
「やっと起きたようだな。」
後ろからおじいさんの声がする。
「誰!?」
「わしは天の番人といったところかな。」
「天の番人?」
その天の番人を名乗る男は話を続ける。
「わかっていないようだから説明するが、石崎菜月、お前はもう死んだんだよ。」
「は!?なにそれ!?なにこの夢!?」
「夢ではない。お前は12月11日にトラックにぶつかって亡くなっているのだ。」
「ぶつかってないもん!ぶつかりそうにはなったけど。」
「ぶつかった衝撃で即死。魂はそのまま気絶して夢を見ていただけだよ。お前が自転車で車の前に飛び出したそのあとの記憶はすべて夢だ。」
「そんなわけ…。」
「いつもと違って寝坊することも居眠りすることもなかっただろう体が軽かっただろう?死んだからなんだよ。」
「健太!」
「誰だ?彼氏か?」
天の番人を名乗る男がにやりと微笑みながら聞いてくる。
「違うもん!幼馴染なの。」
「ほう。」
番人はまだニヤニヤしている。
「私帰らなくちゃ!」
「いや、だからお前は死んだんだ。これから神の裁きがある。」
「何よ!意味わかんない!ねえ、ここはどこ?元の世界に帰してよ!」
「だから、無理なんだよ。お前は死んだんだ。仕方ないんだよ…。」
天の番人を名乗る男のどう見ても冗談を言っているとは思えない表情にパニックになる。ベタだが頬をつねっても痛いだけで夢は覚めない。
「ねぇ、嘘でしょ…。」
涙が止まらない。もう健太にも有紗にもお母さんにも会えないなんて。ただひたすら泣き続けた。泣き疲れていつのまにか寝てしまったようだ。目が覚めると、再び番人を名乗る男がやってきた。
「やっと起きたか。お前はもう死んだ。ただ、聞いたことあるか?死後7日間は死者の霊は地上に留まることができるんだ。お前の魂はぶつかった衝撃で気絶してしまったせいで7日間しっかり留まれなかった。ただ、今日から7日間地上に留まる期間を特別に与えてやれることになった。だから、戻って霊としてやり残したことを果たして来い。ただ、霊感がある奴もいるから気を付けろよ。」
(1週間も戻れる!そうすれば健太や有紗、お母さんに何かできるかもしれない!でも…。)
「お化けって何ができるの?物も触れる?」
「ああ、勿論だ。病院でだれもいない病室のナースコールが鳴ることもあるくらいだからな。ただ、気を付けろよ。ものにぶつかって落としたり物音立てたりしたら、心霊現象で大騒ぎになるからな。誰かがいる時にものを動かすのもやめろよ。」
「えー、難しいなぁ。」
「期間は18日から24日までだ。今は17日の23時55分だ。だから、25日の夜中の0時まで。その時間になったら魂は強制的にここに戻される。いいな?」
「え?でも、健太の誕生日は25日なのに!」
「仕方ないだろ。特例はないんだ。それにここから地上を見守ることもできるから安心しろ。」
「天からしか見れないなんて…。」
「仕方ないだろう。全てはお前がギリギリに登校して飛び出すからこうなったんだ。」
確かにそうだ。それをいわれるともう何も言えない。素直に応じて霊として健太の元に降りて、健太を喜ばせることを決意した。
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