14.妻がいない婿殿だから

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「姉さんと彼の関係を知る悪い男に『倉重の娘は男がいて、子供は誰の子か判らないことを社長に言って強請(ゆす)る』と脅されて、その男と彼が……刺し違えて……。彼が先に刺されたらしいけれど、最後に彼も悪い男を刺したそうなの。つまり、彼が悪い男から倉重を守ってくれたの。きっと、離れていても、事実がわからなくても、航が自分の子供と可能性があるなら守ろうと決してくれたんだと思う」  ああ! そんな悲痛な嗚咽を漏らし、ついに母がテーブルにつっぷしてしまう。  人に悟られないよう声を殺して泣いている。そんな母を見たくなくて、必死に秘密を守ってきた。なのにカナは自分に架していた『使命』を捨て去り、結局、『これぞ最悪』という状態に自ら陥れている。  でも……。そうではないんだ。  どんなに辛くても、知りたい真実がある。それを知ったからこそ、前に進めることもある。  それを、大人になりきれない、本当の覚悟が出来ない、勘違い、独りよがりなだけだったカナには判らなかったから、家族と離れることになってしまった。 「耀平さんは知っているの?」
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