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「知っているよ。わたしが隠していたから、もの凄く怒ったの。どうして俺に相談をしてくれなかったのかと。倉重を守る男は俺なのに、知らない男が知らないところでカナと一緒に守っていたのかと怒られた」
それが貴方達が別れた理由なの? 母に言われ、カナは素直に頷いた。
また母が『ああ。なんてことなの』と顔を覆って泣いた。
「カナ。お母さんも怒っているわよ。どうして相談してくれなかったの」
「非道い秘密だもの。お母さんも義兄さんも、まったく気がついていないと思っていたから。だって……。姉さんが裏切った時、わたし、協力してしまった」
「あの時ね。美月が貴女の下宿に半月ほどいて、帰ってこなかった時ね」
またカナは静かに頷く。
「まあ、カナ……。あの時、貴女はまだ十八十九。まだ若くて大人にもなりきれていない貴女が、そんなことに巻き込まれていたなんて……。お母さん、気がつかなくて本当にごめんなさい」
隣に座っているカナの手を、母が久しぶりに握りしめてくれる。カナも涙が出てきた。こんなふうに、子供の時のままお母さんに全てを受け入れてもらって許してもらって、労ってもらえるのが久しぶりで……。
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