6612人が本棚に入れています
本棚に追加
婿殿に酷いことをさせていたと、また母が泣きさざめく。
「金子さんは結婚できるような男性ではなかったの。だからお姉さんも諦めて、耀平義兄さんと生きていく決心をしていたんだと思う。でも……駄目だったみたい」
「亡くなったその方に、どう詫びればいいの。どう……。耀平さんにも、酷いことを強いてしまったわ」
気に病む母に、カナは……。
「でも、たぶん。俺はこれで良かったんだって……言ってくれると思う。本当にうちのこと心配してくれていたの。自分が悪者になっても守りたいみたいだった。最後に会った時、お父さんもお母さんも、義兄さんも、そして最後に言いにくそうにして航のことも、守ってくださいって言われた」
「そうだったの。ひと目、お会いしたかった……。耀平さんは嫌がるでしょうけれど」
「うん。金子さんに内緒で会ったことも、義兄さんを傷つけてしまったの」
涙が止まらなくなった。一緒に暮らそうねと深く愛しあった夜の翌日、別れの夜になった。あの日がいまでも昨日のように蘇る。
「花南、こっちにいらっしゃい」
母がふくよかな身体で、花南を深く抱きしめてくれた。
「お母さん」
最初のコメントを投稿しよう!