15.星の数ほど嘘ついた

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 彼が小学生の頃から、夏休みは海釣りに行くことが多かった。義兄と航と、そしてカナ。三人でひとつの家族のように出掛けて、一日中釣りをした。  砂場に三人でパラソルを立てて、レジャーシートにはお弁当や水筒にクーラーボックス。お弁当は、カナが作った『ぶきっちょなお弁当』とお祖母ちゃんが作ってくれた『ちゃんとしたお弁当』が二つあるのも恒例。  『カナちゃんのお弁当がだんだんマシになってきた』という航のひと言も恒例だった。  燦々とした太陽、ラフな恰好で長い投げ竿を片手に黙々と沖合に糸を飛ばすお父さんと、お父さんの真似っこで意地になって頑張る息子。そして、ぶきっちょで全然釣れない叔母さん。  叔母さんは釣り餌が苦手で、いつも義兄であるお父さんにつけてもらっていた。  それが当たり前のようにわかっている子が、今日はすぐ目の前にいる。 「ありがとう。航」 「カナちゃんたら、相変わらずだな。ガラス以外は、めちゃくちゃ無頓着だもんな。あ、料理はめっちゃうまくなったけどさ」  もうもう、相変わらず生意気な口を利くなあとカナは面食らった。そしてついに黙って見ていた親方が笑い出した。
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