15.星の数ほど嘘ついた

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 甥っ子が持ってきた義兄の言葉に、カナは打ちのめされている。    居場所がわかっても、どうして義兄さんがカナに関わらなかったのか。  初めてわかった気がする。    ――わたしを、家からも、自分からも、『自由』にして? ガラスがあってこそのカナだからと手放してくれたの?  カナが家から解放されるということは、家を守ろうと縛っていた『秘密』から解きはなたれることを意味している。  義兄だけじゃない。姉から大きな秘密を預けられた妹としても自由になる。   もうその秘密は、おまえのものじゃない。この家のものだ。おまえがひとりで握りしめていたものを手放して。その手でガラスを吹け――。   おまえのために、自由にするんだ。 もう俺の傍にいなくてもいい。 秘密で傷ついただろう俺を案じなくても良い。 俺は航と生きていける。 だから……。義兄だったばかりに、おまえを縛ったから、もう義妹でなくても情愛がなくなってもいい。 寂しい兄貴のことは、もう気にはせずに。自由にカナらしく。    ピキン、パリンと歪む氷の音色と一緒に、そんな義兄さんの声がカナには聞こえてしまった。  
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