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半分眠っているみたいと揶揄される私と違って、美優は笑顔の似合う素敵な女の子だった。
友達も私と違ってたくさんいるし、結婚にしても美優が先にするべきだったし、今度の事にしても美優じゃなく私に訪れるべきであったのだ。
私の結婚式の余興について話し合った、12日後。
美優は、猛スピードで歩道に突っ込んできた外車に無情にはね飛ばされ、呆気なくその命を落とした。
訃報を聞いた私は、仕事を終えるとすぐに喪服に着替え、美優の葬儀に出席した。
しかし、その場においても私は泣く事は出来なかった。
心は、悲しみに満ち溢れている。
目の前には、美優のその亡骸が入った棺桶がある。
が、「美優が死んだ」という実感が持てない私は、泣く事が出来ず、ただ悔しさのみを募らせていった。
2ヶ月後、私は結婚式を迎えた。
私の目の前にある「友人代表」のテーブルは、美優が座る予定だった席の一つがポッカリと空いていた。
「それでは、友人代表である松島美優さんによる『ビデオメッセージ』です」
司会の女性が、空席の美優の席に目をやりながら、悲しげに言葉を続けていった。
「ただ、残念な事にこの『ビデオメッセージ』を作成した松島美優さんは、不慮の事故によってその命を落としてしまいました。
ですが、新婦である絵留様のご結婚を祝いたい、という美優さんの意志を尊重致しまして、この『ビデオメッセージ』を流させていただきます。
皆様、どうぞご覧下さいませ」
司会の言葉が終わると同時に、披露宴会場の照明が落ち、壁にかけられたスクリーンに映像が流された。
その映像は、小学生からの親友である美優だからこそ作る事が出来た映像であった。
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