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「アナスタシアだけだから」
レオンハルトの言葉が呪文のように聞こえた。
たとえ“アナスタシアだけ”という言葉が今だけのものだとしても、構わない。
今だけはレオンハルトが自分だけのものならば、それで充分だから。
レオンハルトの愛が永遠に続くなどと思わないようにしなければ。
甘いお仕置きを受けながらそう思うアナスタシアだった。
* * * * * * * * * * * * * * * *
ヘルストン家の別荘から戻って二週間ほど過ぎた頃。
いつものように三つ子たちの賑やかな声が響く。
「わっ、すっごくキレ~」
フィナがうっとりした声をあげ、手にした何かを掲げた。
「みてみて!ほら」
「わ~ほんと綺麗」
サーラも一緒になって騒ぎはじめる。
「あ!あんた達、触っちゃダメって言われたでしょ!」
リュイが慌ててフィナが掲げたものを奪う。
「汚したり、破れたりしたらどうするの!」
「大丈夫、大丈夫」
フィナが悪びれることなく笑う。
リュイが奪い返したものを丁寧な手つきでハンガーにかける。
「ほんと綺麗なドレスですね」
リュイもうっとりとしてため息をつく。
大きく膨らんだ裾。
大きく胸元の開いた淡い黄色のレースドレスだった。
まるでウェディングドレスのようなデザインをしている。
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