episode6 クルド公爵

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(女性が使っていた?) レオンハルトのための部屋ではない? そんな気がした。 「二回目だよ」 「!」 背中からレオンハルトの声がしてビクリと反応した。 驚いて心臓がドキドキしている。 「ここに来たの、二回目」 「・・・・・・え?」 背中から抱きしめられる。 「・・・急に、なんですか?」 「昨日の質問の答え」 「し、質問?そんなのしてな・・・」 やっぱり酔っ払って変なこと口走ったんだ。 アナスタシアの顔が青ざめていく。 「ここに一緒にきたのは」 「い、いいです!」 両手で耳を塞ぐ。 聞きたくない、知りたくないと思った。 他の女性とここで過ごした思い出なんて聞きたくない。 「酔っておかしなこと言ったかもしれないけど、忘れてください!!」 「アナスタシア、聞いて」 「嫌です!」 レオンハルトの両手が耳を塞ぐ手をつかむ。 いつもより優しい声で話しかけるなんてズルい。 逃げそうになる体をレオンハルトがひきとめようと、抱きしめる腕の力がきつくなる。 「ヤダ!聞きたくない!」 「母だよ」 短く答える。 「え?」 「シエナ皇后。私の母だよ」 「お・・・母様?」 「うん。そう」
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