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部屋にくる途中で見た肖像画を思い出した。
(あの絵の女性)
レオンハルトと同じ銀髪と鳶色の瞳。
容姿も雰囲気もとてもよく似ている。
それもそのはず。
二人は母子なのだから。
「ロイの母親はシエナ皇后の侍女をしていたんだ。病気になって母は公務に出ることができないほど体が弱くなっていったよ。子供心に、もうすぐ母はいなくなるんだ・・・ってわかった」
「・・・・・・」
レオンハルトの声がほんの少し沈んだ。
その悲しそうな声に胸の奥がキュッと傷んだ。
今、レオンハルトは子供の頃に亡くなったと言ってた母親のことを思い出しているんだ。
「療養のためにヘルストン家が母をこの城に呼んだんだ。その時、まだ幼かった私も一緒に来た」
幼いレオンハルトが頭に浮かぶ。
子供には大きなお城は迷路のようで遊び場として楽しかっただろう。
お城中を探検して、毎日走り回って。
「ここは母が使っていた部屋。二人で食事をしたり、物語を読んでもらったり、一緒に寝たり・・・最後に母と過ごした場所」
「・・・・・・ごめんなさい」
両手で顔を覆うアナスタシア。
申し訳なさすぎて顔を見れない。
「なんで謝るの?」
「だって・・・私」
母親に嫉妬してたんだ。
ここはレオンハルトにとって楽しい思い出だけじゃない。
母親と別れた場所だから。
「知らなかったのだから仕方ないよ。母のことを話してなかった私が悪い」
「違う。私が悪いの。私が馬鹿なの」
自分の愚かさに激しく落ち込む。
情けなくてレオンハルトの顔が見れない。
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