episode6 クルド公爵

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ゾクゾクと電流のような痺れが背中をかけめぐる。 服を押さえる手がもがくようにシーツを掴んだ。 「アナスタシア」 「ん」 名前を呼ばれる。 レオンハルトの手が背中をそっとなでる。 その手の感触にアナスタシアは顔をベッドに埋めてこらえた。 「アナスタシア」 何度も囁くように耳元で名前を呼ぶ。 声が唇が瞳が手がアナスタシアを愛してると言っているみたい。 「他なんていないよ。君の代わりなんて誰にもできない」 「あっ・・・んんっ」 流れるような手つきで服が脱がされていった。 その間もたえることなく与えられる刺激に何も考えられず、ただ頭をふり言葉にならない声をあげた。 シーツを掴む手にレオンハルトの手が重なる。 固く結んだアナスタシアの手を優しくほどき、クルリと体の向きをかえる。 目の前にいつもと変わらない優しい光の鳶色の瞳。 「私に君以外の女がいると本気で思ってる?」 「いないと思いたいけど・・・いても・・・おかしくは」 「百歩譲って他に女がいるとして、それを君に隠して何人もの女と同時に付き合っていると?」 見下ろすレオンハルトの瞳が哀しげに揺れる。 「私はそんな器用な人間じゃないよ」 だって思わないもの。 想像すらしていないもの。 自分(アナスタシア)だけだなんて。 そんなこと、あるはずないと思ってたから。 「私がこんなことをするのも、したいと思うのも」 「っ・・・」 レオンハルトの唇が首筋に触れる。 首筋から鎖骨、胸元へとなぞるようにゆっくりと滑る唇の感触に頭の中が真っ白になる。 レオンハルトの両腕に抱かれると不思議と安心感に包まれた。
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