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北西部の街キャッシュビルドから車で30分行くとそれはあった。
大きな湖の上に浮かぶ青銀色のお城。
クルド公爵の屋敷は蒼白いガラスのような大理石でできた美しいお城だった。
「凄く綺麗なお城ですね」
粉雪が舞うここは、絵画から抜け出したような幻想的な雰囲気がした。
まるで花吹雪のように風に舞う雪が美しかった。
「真冬になると雪が積もって、一面白銀の世界になるんだ」
「それは綺麗な風景でしょうね」
美しい景色をレオンハルトと二人で見てみたいと思った。
「中に入ろうか。外は寒いだろう?」
「はい。思っていたよりも」
マジカ村には雪は降らなかった。
初めて触れる雪にアナスタシアは感動していた。
肌を刺すような寒さ、雪の冷たさはとても心地よかった。
ピンと張りつめた冬の空気感が好きだった。
「子供のころは、雪が積もると遊ぶのが楽しかったな」
レオンハルトの手のひらに粉雪が落ちる。
黒い革手袋にあたった雪はすぐにとけて水になる。
粉雪をみて懐かしそうに話すレオンハルトはとても穏やかな表情をしている。
「どんな遊びを?」
「従兄妹のゲオルクとエミリアの三人で雪合戦したり、雪だるまを作ったり」
「楽しそうですね」
「叔父がいると雪で彫刻みたいなの作ってたな」
「雪の彫刻ですか!?」
それは凄い。
クルド公爵は芸術家でもあるのかしら。
「叔父は手先の器用な人でね、絵や文字を入れるのがとても上手なんだ」
「そうなんですか。公爵様の雪の彫刻、見てみたい」
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