episode6 クルド公爵

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勢いよく飛びついてきた女性をレオンハルトはしっかりと抱きとめた。 そのどさくさでアナスタシアはさりげなく引き離された。 「エミリア!?」 「レオン、お帰り!会いたかった!」 エミリアと呼ばれた女性は両腕をレオンハルトの首に回して抱きついている。 薄い茶色の髪は陽にあたると金色に輝いて見える。 赤みを帯びた真珠色の肌。 高く通った鼻筋。 絵に描いたような美少女だ。 アナスタシアと同じ緑瞳はまっすぐにレオンハルトを見ている。 「やっと帰ってきた」 「エミリア、苦しいから手をどけて」 しがみついて離れないエミリアの腕を外そうとするレオンハルト。 「いや。せっかく会えたのに」 「邪魔だよ。これじゃ全然歩けない」 「もぅ、レオンの意地悪!」 無理やりレオンハルトに引きはがされたエミリアが唇を尖らせる。 「アナスタシア、おいで」 紹介するためにアナスタシアを呼ぶ。 でも、アナスタシアは二人に近くのを躊躇った。 エミリアがチラリと横目でみる。 「エミリア。彼女がアナスタシア。仲良くしてあげてね」 アナスタシアのもとに近づくとレオンハルトの手が背中に回る。 見せつけるように体を近づけ、アナスタシアに触れる。 「アナスタシア。彼女が従妹のエミリア」 「アナスタシア・ビィッツです。宜しくお願いします」 「・・・そ。宜しくね」 フィッとそっぽを向くエミリア。 目線は一度も合わせてくれない。 当然エミリアからの挨拶はなかった。
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