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案内された部屋は執務室で、公爵様はお仕事中のようだった。
机の前で立ち上がった公爵様がこちらを見てにこりと微笑んだ。
髪や瞳の色はレオンハルトと異なるけど、優しい目もととシュッとした顎や首筋の雰囲気は良く似ている。
「レオン。お帰り」
親しみをこめた優しい声音。
慈愛に満ちた温かい瞳がレオンハルトに笑いかける。
「元気にしていたか?」
歩みよった公爵様はレオンハルトの体に触れ無事を確かめる。
ちゃんと食事はしているかとか睡眠はとれているかなど心配そうに聞いていた。
あぁ、公爵様にとってレオンハルトは我が子同然なんだなと思った。
「それで、そちらの女性がレオンの」
公爵様がアナスタシアを見る。
ブルーサファイアのような美しい瞳に見つめられてドキリとする。
「はい。アナスタシア、おいで」
振り向いたレオンハルトがにこりと笑う。
誘うようにさしだされた手をとり、レオンハルトの隣に立つ。
「アナスタシア・ビィッツと申します。公爵様にお会いできて光栄にございます」
スカートの裾を軽くつまみ上げお辞儀をする。
内心は心臓がドキドキしすぎて、今にもひっくり返りそうだった。
「セバスティアノ・クルド・ド・マドックロックです。遠いところをようこそおいでくださった」
優しく迎え入れてくれる公爵様は穏やかな笑みを浮かべた。
笑うと目もとがレオンハルトと似ている。
「アナスタシアさん。お会いできて良かった」
「ずっと、二人はまだか。二人はまだかって朝からうるさかったよ」
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