episode1 出会い

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暗闇に潜み息を殺す。 この身を隠してくれるのは、雑多に積み上げられた空き箱の山。 「おい、どこに行った!?」 「こっちだ!こっちに逃げたぞ!!」 「チョコマカとすばしっこい女だ」 「逃がすな!探せ!!」 数人の荒々しい足音が近くでする。 全力で走って逃げてきて息が上がる。 自分が吐き出す呼吸音がひどく大きく聞こえた。 (いけない。見つかる) アナスタシア・ヴィッツは、手で口元を覆った。 「お前らあんな上玉、いったいいくらで売れると思ってるんだ!!」 「いい女だったな。金持ちの旦那が高値で買い取ってくれるぞ」 「出港は明日の正午だ。それまでに連れ戻せ!!」 すぐ横に男たちがいる。 絶対に見つかりたくない。 あの男たちに捕まったら、明日の船に乗せられてしまう。 そうしたら、王都か、あるいはどこか異国の奴隷市場にでも売られてしまう。 (恐い・・・・) 震えそうになる体を抱きしめる。 男たちが他をさがそうと立ち去ってゆく気配がする。 やがて静かになった。 (逃げなくちゃ) 冗談じゃない。 このまま捕まって、どこかの下品な金持ちの男に買われるなんて。 奴隷として屋敷で働かせられるか、玩具になるしかないなんて。 そんなの絶対嫌だ! 何が何でも逃げなくては。
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