episode1 出会い

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(今のうちに) 辺りに人がいないのを確認して外に出る。 男たちが行ったのとは反対方向に歩く。 裸足の足は切れて血が滲んでいた。 痛みは感じていなかった。 売り飛ばされる恐怖に比べれば、こんな痛みなんてことはない。 「!」 角を曲がったところで男と出くわす。 明らかに柄の悪そうな大男が行く手を塞ぐように立っている。 直感で危険を感じた。 この大男は、アナスタシアを追いかけている荒くれ者たちの親玉だ。 今すぐ逃げなければ。 「おっと。どこへ行く」 「放してっ」 腕を捕まれ引き寄せられる。 なんて力。 逃げられない。 「とんだじゃじゃ馬だな」 「いたっ」 髪を引っぱられ頬をはたかれた。 「これじゃ売り物にならんな」 「っ」 「・・・・調教が必要か?」 「やっ・・・・やめ」 人気のない裏路地に引きずられて行く。 乱暴に突き飛ばされ地面に倒れこんだ。 すぐに体を起こしたけれど、人売りの大男はアナスタシアの上に股がり、あっという間に組敷かれた。 「かなりの上玉を傷物にするのは惜しいが、まあ、それでもお前はかなりの高値で売れるだろうよ」 覆い被さる男。 下卑た笑みに寒気がする。 恐怖で体が(すく)んで叫び声すら出せない。
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