風変わりな屋敷

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風変わりな屋敷

学校から帰る途中、ふと甘い優しげな匂いを感じ、誘われるように歩いていく。 普段通る道から少し反れるだけで、全く別の景色が広がるのはなんだか面白い。 行き詰まったときはものの見方を変えてみると良いとはよく言うが、確かにそうかもしれない。 段々と匂いが強くなっていき、ようやくその場所へとたどり着く。 和風の家が並ぶ町には似つかわしくない、お金持ちが住んでいそうな大きなお屋敷。 匂いの元は、庭に植えられた錆桔梗色の花であるようだ。 「綺麗…」 ついつい見とれて、屋敷の周りを一周する。 すると、屋敷から一人の男性が庭へと出てきた。 今度は洋風の屋敷の雰囲気に似合わない、落ち着いた着物を着ている。 20代後半くらいだろうか?涼やかな顔の男性が、私に気づく。 「初めて見る顔だね。迷子かな?」 こちらに近付き、私と男性を隔てるものが柵だけになる。 「あ…えと…お花が…綺麗で…」 思わず、緊張から言葉が上手く出せなくなってしまう。
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