ひょことの出逢い

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私は急いで1から10まで数え始めた。ひょこは特徴的なぽこぽこという足音をたて、走っていった。段々小さくなっていく足音を聞きながら数を数える。 「八、九...じゅ~う!」私は目を開けた。 よーし、今度は負けないぞ! その時自分がかけ布団を握っていることに気がついた。これ、返さなきゃ。 「おばあさん布団ありがとうござ...あれ?」 私はおばあさんに布団を返そうとした。でも、おばあさんはどこにもいなかった。ただ、ベッドが一つポツリと置いてあるだけ。 私は不思議に思いながらも布団をベッドの上に乗せ、ひょこを探しに病室を出た。おばあさんはどこにいってしまったの?もしかしたら、ひょこみたいに隠れてるのかもしれない...。 私はそう思い、ひょことおばあさんを探してまわった。 ずいぶん探した。でも、ひょこはどこにもいない。病室も四階から一階まで全部見た。受け付けもトイレもいろんな部屋をまわったけどいない。それに..... ひょこどころか、さっきはいたはずの看護師もいなかった。みんなどこにいったの? 急に怖くなった私は、受け付け前のところでしゃがみこんだ。物音一つしない病院はとても寂しい気がした。 「ひょこは小さいから...ずるいよ」 涙を堪えながら声を絞り出した。ひょこ、出てきて.....。その時だった。 『隠れないで出てきてよ』 声が聞こえた。 誰の声かはわからない。ひょこじゃない、おばあさんでもない、とても高い声。 『置いてかないでよ!』次に聞こえたのは叫び声だった。とても悲痛な叫び声で、体の奥から必死に出している声だった。 「誰かいるの!」私は勇気を振り絞り、声の主を探す。でも、一体どこから話しているのかわからない。耳を澄ましてみる。 でも、私が問いかけたとたん、その声はピタリと止まってしまった。 「ひょこ!ひょこもう終わり!私の負け!怖いよ!!」私はまた怖くなってひょこのことを必死に呼んだ。負けでもいい。出てきてほしい。離れないでほしい。 .....ぽこぽこ。 この足音は...! 「ひょこ!」振り返ると、ひょこがにっこりした顔で立っていた。 『みこちゃん!』ひょこは優しい声で言った。その瞬間涙が溢れた。 「ううっ、声がね、してみんな...っいないうわあああああん」私は小さなひょこを抱きしめた。涙が次から次へと溢れ出す。久しぶりに泣いた気がする。ひょこは小さな手で私の頭をぽんぽんした。 『みこちゃん、ごめんね!もうどこにも行かないよ!』ひょこが優しく私の手を握る。 私は暫く、泣いていた。涙が枯れるまで、ずっとずっと泣いた。 そうして、泣き止んだとき、私たちはかくれんぼをやめて、違う遊びをすることにした。
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