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とうとう ゆうしゃ が あらわれた!
「人間界の様子をこれへ
クックック、そろそろ人類も滅亡する頃か?」
「ははっ」
本日映った光景は、魔王を倒そうと企てる「ゆうしゃ」の姿であった。
顔は甲冑によりよく見えないが、背格好からして若い男である。
「こくおう」の元で何やら剣を授かっている。
「クックック、人間というものは何とも阿呆な…何度我に挑めば気が済むのか
この者の名前を「あああああ」とでも改変してやろう…さぞかしやる気も削がれるであろうな」
「左様に御座います」
「ならば答えは一つだな」
――我の力にひれ伏せ人間ども!!
魔王の手が悪の光に覆われ、光は鏡へと解き放たれた。
✼•┈┈┈┈•✼•┈┈┈┈•✼•┈┈┈┈•✼
その頃、人間界では……
「これを持っていけ あああああ よ」
「新しい力を授けよう あああああ よ」
(どうしてこうなった…)
勇者は自らの名前を変えられ、地味にモチベーションがダウンするかと思いきや、
画数が良かったのか、天運、人運、総合運が格段に上昇し
道中で生き別れの兄に再会できたり
宝箱からレアアイテムが出てきたり
最強の技を閃いたり
持病の水虫が治ったり
とにもかくにも魔王の城までスムーズに到着することができた。
「パラメータもMAX…これ勝てんじゃね?」
かくして、魔王との決戦が始まりを告げる。
✼•┈┈┈┈•✼•┈┈┈┈•✼•┈┈┈┈•✼
「クックック…よくぞここまで辿り着いたな!まぁせいぜい悔やむが良い」
「くっ…何というオーラだ…しかし!俺は負けんぞ!」
魔王と勇者はテンプレのようなセリフをやり取りしながら、剣を交えた。
「勇者よ、なぜ我に挑む……地球が破滅に向かっていることへの腹いせか?
それは我のせいではない、人間が我より弱いため、淘汰される運命にあるだけよ!」
「??いや、地球は何かよくわからんが最近やたら平和だぞ??」
「は????何で????
クッ、なら何だ…貴様も正義感やら使命やらに絆(ほだ)されたクチか!?」
「え、いや俺は別に使命とかじゃなくて時給850円のバイトの雇われ勇者だし…」
「ええ…??!
まぁ良い!!ごちゃごちゃうるさいわ!!地を這え!!」
「ぐっ!!がはぁぁ!!」
魔王の力は絶大で、勇者は吹き飛ばされてしまった。
甲冑の頭部(ヘルム)が壊れ、…勇者の顔が露わになった。
「なっ……!!!貴様……」
その刹那、魔王の動きが止まる。
「ふっ、どうした魔王!決闘中断か!?容赦はしないぞ!」
勇者に詰め寄られ、魔王を覆う闇のオーラが……ピンク色に染まっていく。
「貴様……!
めっちゃ好み……♡やば、もう無理……」
「えええっ!魔王って女?!
しかもオーラでよく見えなかったが、
……よく見たら結構…俺も好みかも……」
魔王と勇者は……恋に堕ちた。
「……」
二人の姿を、ロフィーは見て呟いた。
「……左様に、御座いますか」
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