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「全部」
「全部!って、あなた授業ちゃんと聞いてなかったの?」
「偶に聞いてたけど、聞いてもわからないから諦めてました」
姫乃が素直に答える。
「見せてみなさい」
「……うん」
姫乃が英語の教科書を見せる。
「これはね。Le plus important est invisibleと呼んで、大切なものは目には見えないって意味なの。サン=テグジュペリの代表作の星の王子様の一節なのよ」
「そうなの?」
「姫乃、百合本もいいけど、もう少し文学も嗜みなさい。小学生でも知ってるわよ」
「はい、しゅいません」
教えて貰ってる以上、姫乃には何も言えない。
結局その後もゆず先生による英語の個人レッスンは夕食後もお風呂から上がってからも寝るまで続けられた。
「お姉ちゃんごめんね」
「何が?」
お布団に入ろうとしていたゆずに、姫乃がゆずのパジャマを掴んで申し訳なさそうに頭を下げる。
「だって、姫乃に勉強教えてたからお姉ちゃんの勉強進まなかったから」
姫乃は、自分があまりにも出来ない為に見かねたゆずが、自分に付きっきりで勉強を教えていたので、ゆずの勉強の邪魔をしてしまったと落ち込んでいた。
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