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プロローグ
Another time another place……
見知らぬ時代の、見知らぬ世界のお話。
銃声が止んだ。
人差し指が痛む。青年は自分の右手の人差し指をじっと眺めた。凹みが出来ている。ああ、今朝からずっと銃爪に指を置いていたからか。痛みを和らげるために一旦自動小銃を支える役目を自分の肩に委ねる。肩掛けのベルトに下げられた自動小銃がだらんとぶら下がる。
自由になった左手で凹みが出来た右手を軽く揉む。ぐい ぐい ぐい…… いくら右手の人差し指を揉みほぐしても痛みが和らぐことはない。
後ろから簾を捲る音がする。青年は慌てて振り向きながら自動小銃を構え直した。目の前にいたのは自分と同じ風体をした男だった。その男は青年と同じく、自動小銃を構えている。
「おいおいおい、待て待て」
簾を開けた男は両手を上げて自動小銃を落とした。青年はその姿を見て安堵しながら自動小銃の構えを解いた。
「なんだお前か」と、青年。
「西の洞窟の掃討が終わった。ゲリラ共はもうみんな蜂の巣さ」
「洞窟か。ゲリラはもういないのか?」
「殲滅済だ。村担当はどうだ?」
「この辺の家の中見れば分かるだろ?」
「ああ、死屍累々だ」
男は村外れの洞窟から、ここ村中央に来るまでの道中で数え切れない程の死体を見てきた。いずれも女・子供・老人、抵抗する力もない無辜の一般人である。
「何人殺った?」
「知らねぇよ。この村にいる奴らは見つけ次第殲滅。これが上官命令なんだから従わざるを得ないだろ?」
「はん? 上官命令だ? 神託に従ってるだけだろ?」
「疑問に思うな。神託を疑問に思うのは俺らみたいな職業軍人には許されていない」
すると、家の外より銃声が聞こえてきた。二人は慌てて家より外に出る。外では仲間たちが自動小銃の銃爪を引いていた。その銃口の先は村に隣接する森の奥であった。
二人は仲間たちの間に入り、森の奥にて我々に怒りの炎を燃やすゲリラに向かって銃爪を引くのであった。
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