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エリュホーム市中央公園。そこでは幸せを謳歌する多くの家族連れが訪れていた。ベニーと少年はその公園の隅にある池の畔にある東屋のベンチに座ることにした。
「ここが二人きりになれる場所? ホテルとか家とかあったんじゃないの?」
「ホテルか、親子連れと誤魔化すにはいいかも知れねぇな。でもな、この国のホテルは大半がペペロンチーノ一家のシノギだ。宿泊手続した時点で、若い衆に取り囲まれるだろうな。家に関しても同じだ、待ち伏せしてるだろうな」
「で、公園外れの池沿い? 確かに屋根はあるけどさ」
「全く、お前みたいな生贄のガキを助けたせいで標的にされちまったよ。お前、悪魔とか言ってたけど、何者だ? 殺される対象なんだから教会や資産家の息子ってセンは無さそうだな」
「悪魔」
「からかうのもいい加減に……」
少年は右手で握っていたベニーの左手を離した。ベニーは瞬く間に苦しみだす。
「これ、僕が悪魔としておじさんにかけた呪い。これで僕が悪魔だって信じてくれる?」
「テメェ…… どんな如何様ァ…… 使ってやがるんだ……」
「イカサマじゃないよ。呪いだよ。僕だって手放していると死が近づくんだから早く手を繋いでほしいな」
お前が手を離しておいて何を言っているんだ。ベニーはそう思いながら渋々と少年の右手をしっかりと握った。先程と同じように心臓の鼓動は正しく刻み始める。
「信じてくれた? 僕が悪魔だって。信じられないようならまた手を離して死にかける痛みと共に教えざるを得ないんだけど……」
また今のように殺されかけてはたまらない。ベニーは少年が悪魔だと言うことを信じることにした。しかし、信じることよりもこんなガキに生殺与奪を握られてしまった怒りで震える気持ちの方が強いのであった。
「お前が悪魔なのは分かった。名前とかはあるのか? 悪魔って言うならどこの冥界とか魔界とかあるんだろ? 教えてくれよ」
「人に名前を聞く時はまず自分から名乗る。人間と言うのは礼儀を欠いた下劣な存在だね」
悪魔に礼儀を問われるとは…… しかし、間違ったことは言っていない。ベニーは自己紹介をすることにした。
「俺はベニー・スター。ベニーって呼んでくれ。ペペロンチーノ一家ってマフィアの幹部やってたんだが、さっき絶縁されちまった。今はただの無職のおっさんだ」
「マフィア…… ベニーはロクでなしなんだね」
「何だとこのクソガキが。自己紹介しろって言うからしてやったのにクッソ生意気な態度とりやがって」
「僕は、レフィカル。魔界を統べる魔王ルシファーの唯一の子だ」
「魔界? 地獄とか冥界とかと似たようなもんか? 本当にあるのか?」
「疑うなら手を離すよ。僕の手を握ってないとすぐに死んじゃうけど、手を繋いでいる限りは絶対に死なない。あ、バラバラになった場合とかは流石に責任とれないけど」
「……」
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