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「だけどね、君がそれを考えることは傲慢なのです。子供…… いえ、我々のような我らがお父様の子がそれを考えることは許されません。後で教化室に来なさい」
教化室を訪れたベニーには体罰にも等しき指導が行われた。邪教徒は悪、それを庇うことは悪、何より我らがお父様に従わないことは悪と言った刷り込みが何時間にも渡って行われる。ここで少しでも逆らうようなことを言えば皮の鞭を手の甲に叩かれて痛みによって悪とは何かを体に染みつけられる。
ベニーが自宅に帰っても同じだった。我らがお父様に対する信仰の深い両親は、教師からの連絡によってベニーが疑問を持ったことを報告された。そして、そこでも痛みを伴った教育が行われる。昨日まで笑顔で一緒に生活を共にしていた相手が豹変し、鞭を振るう。
「邪教徒は悪! 我らがお父様に疑問を思うのも悪! さあ、お尻を出しなさい。それが分かるまで打ち据えるよ!」
ベニーはズボンを下げて痂やシミなどついていない綺麗な尻を丸出しにする。母はその無垢な尻に向かって何度も何度も鞭を振る。尻を出している屈辱と、一撃を食らうだけで尻を切り落としたくなるほどの鞭をくらい泣き喚く。
ただ、我らがお父様に対する疑問を呈しただけで何故にこんな目に遭わなければならないのだろうか。ベニーは屈辱の涙で顔を歪ませながらもう二度とこんなことは言わないし、思ったとしても心の奥底に仕舞い、自分を殺そうと誓うのであった。
自分を殺し続けて幾星霜、ベニーは神聖真光軍を退役するに至った。邪教徒狩りも作業的にこなし、戦争ともなれば「英雄」と評される程の人物になっていた。このまま神聖真光軍に在籍していれば幹部や大臣のポストも約束されていた。それだけ多くの邪教徒を殺してきたということである。数多の邪教徒の屍を積み上げてきたことで得た栄光に意味があるのだろうか? 政府はこれを正義と評するが人殺しには変わりがない。単なる大量殺戮者で悪そのものではないか。
何が正義で悪なのかがわからなくなったベニーは神聖真光軍を辞めるに至ったのだった。
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